【仮想化基盤運用コラム】最終回 

仮想化基盤運用の「今」と「これから」(前編)

紫藤 泰至

・「もの」から「こと」へ
・運用のサービス化

前回 は、仮想化基盤運用をするにあたり、仮想マシンの払い出しなどの運用業務をスムーズにするために依頼主と運用の人双方に関係するルールが必要なことをご説明しました。

依頼主と運用の人双方に関係するルールは、「提供するもの」のルールと「提供すること」のルールの二つに分けられます。これら「もの」と「こと」をそれぞれルール化することにより、仮想マシンを注文する人も提供する運用の人もお互いハッピーになると、ハンバーガーショップの事例をあげながらご説明しました。

「もの」から「こと」へ

「もの」と「こと」。最近よく聞かれるキーワードです。マーケティングの世界で、「もの」消費から「こと」消費にシフトしているなど、消費者の嗜好の変化について話題に上ることがあります。

「もの」と「こと」には様々な定義があるのですが、ここでは端的に、

・「もの」  ⇒ 目に見える物体
・「こと」  ⇒ 目に見えないサービス

と捉えてみます。

「もの」は、目に見えて存在し、手に入れると所有することになります。車、テレビ、料理などがこれにあたります。「こと」は、タクシーで移動する、映画を見る、料理を食べるなど、目に見えないサービスの消費活動にあたります(享受している瞬間は見えますが、時間がたてば消えてしまいます)。

先ほどのマーケティングの話では、消費者が「もの」の所有にこだわらず、楽しい(便利な)その瞬間を味わう「こと」に価値を求めるようになった状況を市場の変化と捉えているようです。「サービス化へのシフト」ですね。シフトした原因には、様々な説があるのですが、今回はサービスそのものにフォーカスしますので割愛させていただきます。

時代はサービスにシフトしているとは言え、サービスを売る側が何も手を打たないで良いわけではありません。サービスは目に見えないものなので、その良さを目に見えるように工夫をする必要があります。消費者の目に留まらなければ、如何に素晴らしいサービスでも買ってくれませんからね。

前回ご説明した「セット」の概念もその工夫の一つです。セットメニューにすることで、どんなサービスが提供されるかを明示することができます。そもそも、仮想化基盤運用が提供するものである「仮想マシン」は物体として存在しません。過去のコラムでも「仮想化とは、幻を見せる技術」とご説明しています。

ご存知の方もいらっしゃると思いますが、仮想化基盤運用のメニュー化はかなり進んでいます。その中でも、Amazon社が提供する「AWS(Amazon Web Services)」、マイクロソフト社が提供する「Microsoft Azure」が有名なところです。これらのサービスは、クラウドサービスと呼ばれています。どちらのサービスもしっかりした、且つシンプルなメニューになっています。今や手軽に仮想化基盤をサービスとして利用できる世の中になったのです。

運用のサービス化

「仮想マシン」を提供することがサービスならば、仮想化基盤運用、さらには「システム運用」もサービスと捉えるべきでしょう。サービス化の波に乗り、今後ますますサービス化の傾向が強まると想像できます。サービス化することにより、顧客視点でより利用しやすい、買いやすい(導入しやすい)内容に変化することが求められているからです。

ただ、これまでの「システム運用」は、サービスと捉えるより単に業務と捉える方が主流でした。どちらかというと、そのシステムに合わせて、オーダーメイドで運用を形作るケースが多かったのです(今もしていますが)。「システム運用」の内容がきちんと提示できないこともあったので、お客様としては利用しにくい、買いにくい内容であったかもしれません。CTCSでは、その反省を含めて「システム運用」のサービス化を進めています。

オーダーメイド型の運用と違い、サービス化された運用は、その提供内容が限定されることも考えられます。ひょっとすると、お客様の要望を100%満たすサービスがない可能性もあります。特に仮想化基盤が対象とするジャンルは広く、一つのサービスだけでは網羅しきれないことがあります。

そこで重要になるのは、サービスの組み合わせです。

例えば





サーバーの仮想化もしたいけど、
デスクトップ(社員みんなが使うPC)も仮想化して運用したい

↓↓↓↓↓

クラウド導入運用サービスFor Microsoft Azure

+

デスクトップ仮想化運用サービス


のような組み合わせです。

上記の例は、以下の2つのジャンルを仮想化する要件です。

・サーバー   ⇒ 社員のみんなが共有して使うシステムを作るためのコンピュータ
・デスクトップ ⇒ 社員それぞれが占有して使うコンピュータ(PC)

このように、一言に「仮想化基盤」といっても、使い方、使う人によってジャンルが異なります。ジャンルが異なるので、システム自体の作り方、運用の仕方も変わります。そこで、CTCSでは提供するサービスを細分化し、いくつかのサービスを組み合わせることで、お客様の要望にフィットする運用を提供できるようにしています。
(後編につづく)

<著者>
紫藤 泰至

<経歴>
メインフレームからのシステム運用の経験を活かし、お客様のシステム運用をデザインする業務を歴任。現在は、仮想化基盤(プライベートクラウド)運用、運用自動化をデザインするコンサルティングに従事。ITIL Expert保有。

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