IT業務効率化

【ワークフローコラム】第9回

「モバイルとワークフローシステムの連携」が働き方改革を加速させる

内藤 晃孝

1. モバイルの導入による働き方改革の促進
2. ワークフローのモバイル対応は「UIの使い勝手」が肝
3. セキュリティやデバイス管理にも注意が必要





モバイルの導入による働き方改革の促進

これまで本コラムで何度も言及してきましたが、「働き方改革」への取り組みがいよいよ本格化してきました。新聞やテレビでは連日「働き方改革関連法案」に関する動向が報道され、一般の人々の間でも「働き方改革」というキーワードはかなり浸透してきた感があります。

企業においても、かなり具体的な取り組みが見られるようになってきました。今後ますます少子高齢化が進み、労働人口が減る一方の日本においては、働き方を抜本的に改革して生産性を今以上に向上させなければ、企業は生き残っていくことが困難になるでしょう。こうした危機感を早くから抱いてきた企業は、在宅勤務やリモートワークといった新たなワークスタイルを取り入れるとともに、それらを促進するためのITソリューションも積極的に導入してきました。

その代表格が、いわゆる「モバイル」のソリューションです。現在、多くの企業が従業員にスマートフォンやタブレット端末を支給し、在宅勤務やリモートワークなどの導入に乗り出しています。モバイルデバイスを活用することで、従業員はオフィスにいるときだけでなく、オフィスの外にいてもメールや社内システムにアクセスできるようになります。これにより、それまでは会社に戻らないとこなせなかった仕事が、会社の外にいながらこなせるようになり、外出先から帰社する時間を節約できます。自ずと仕事の生産性は向上しますし、出社せずとも自宅で仕事を行える在宅勤務も身近な制度となってくるのではないでしょうか。

ワークフローのモバイル対応は「UIの使い勝手」が肝

ただし、単にモバイルデバイスを導入するだけでは、働き方改革の取り組みはなかなか前に進みません。デバイスだけでなく、それを介して利用するシステムの使い勝手が良くないと、いくらデバイスを従業員に支給しても結局は現場で利用が定着せず、やがて形骸化してしまいます。

モバイルデバイスを使った在宅勤務やリモートワークを実現する上で、ワークフローシステムは効果を発揮します。多くの企業の業務効率がなかなか上がらない原因の1つに、申請や稟議の承認を担う役職者が社内にいない間、承認プロセスが停滞してしまい、結果的に業務全体が滞ってしまうことがあるからです。そこで、承認担当者が社外にいても、モバイルデバイスからワークフローシステムにアクセスして承認処理を行える仕組みを実現できれば、業務の停滞は改善され、ビジネスのスピード感を上げることができます。

ただし、これまで社内で使っていたワークフローシステムに、単にモバイルデバイスからアクセスできる機能を追加するだけでは、こうした運用はなかなか定着しません。というのは、PCブラウザからのアクセスを前提として設計されたUIが、必ずしもモバイルデバイス上で使いやすいとは限らないからです。むしろ、そのままでは使いにくくなってしまうケースがほとんどです。

大きな画面で多くの情報を一気に表示するPCとは異なり、スマートフォンは小さな画面とタッチパネル操作を組み合わせた独自のUIで操作を行います。そのため、スマートフォン上での利用を前提としないUI仕様では操作性が悪く、結果的に現場のユーザーから敬遠されてしまいがちです。特に、ITに慣れ親しんでいない従業員の中には、「こんなに使い勝手が悪いものを使うぐらいなら、これまで通り会社に戻って作業する!」と言い出す人も出てくるかもしれません。「承認時のボタンクリックをなるべく減らす」などの工夫が必要です。

また、使い勝手が悪い仕組みを導入すると、社内ユーザーサポートに対する問い合わせも多くなります。ワークフローシステムは多くのユーザーが利用する仕組みですから、こうした問い合わせ対応の工数も決して少なくありません。



セキュリティやデバイス管理にも注意が必要

ワークフローシステムをモバイル対応させる上では、このほかにも幾つか気を付けるべきポイントがあります。まず真っ先に留意すべきは、やはりセキュリティ対策です。多くの場合、インターネットを経由して社外から社内のワークフローシステムにアクセスすることになるため、セキュアなネットワーク接続を担保する仕組みが必須です。そのための代表的な方法としては、VPN(Virtual Private Network)やセキュアブラウザなどによる通信の暗号化があります。

VPN接続には幾つかの方法がありますが、モバイルデバイスでは専用アプリケーションを導入することでVPN接続サービスを導入できます。セキュアブラウザも同様で、様々なベンダーが製品・サービスを提供していますが、ワークフロー製品ごとにセキュアブラウザに対応しているものとしていないものがある点に注意が必要です。

次に、社外からモバイルデバイスを通じて承認書類や稟議書を参照する場面においては、他人から除き見られることで情報が漏えいするリスクにも留意する必要があります。実際、電車の中で重要な書類を開いていたのを除き見られて、機密情報が漏えいしたケースもあると聞きます。従って、ワークフローシステムをモバイル対応させる際も、モバイルデバイス上での参照を許すドキュメントと許さないドキュメントを、あらかじめきちんと峻別しておくことが重要です。


最後にデバイス管理です。モバイルデバイスを導入するに当たっては、PCとは異なる専用の管理手法を取り入れる必要があります。特にモバイルデバイスは、PCよりはるかに紛失・盗難リスクが高いため、万が一紛失・盗難に遭った際、リモートからデバイス内のデータを消去し、設定を初期化できる「リモートワイプ」の仕組みが不可欠だといえます。

こうした機能は、一般的にはMDM(モバイルデバイス管理)と呼ばれるソリューションの一部として提供されます。 また、リモートからモバイルデバイスを制御する機能は、働き方改革の観点でも重要です。テレワークや在宅勤務の場合、リモート環境下で仕事を行えてしまうため「隠れ残業」が問題となります。業務時間外は利用させない仕組みとしてリモートによる制御が必要です。



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