「運用」がなかなか理解を得られない謎のキーワードであることを、前回のコラム でご説明しました。
これから数回のコラムでは、CTCシステムマネジメント株式会社の考える「運用」の基本的な捉え方をご説明し、理解を深めていただくことを目標とします。そのため、まずは厳密に言葉を定義することにこだわらず、ある程度柔軟な言葉で説明を進めていきます。
それでは、「運用」の言葉に込められた意味を紐解いていきましょう。
世の中には「運用」が満ちあふれています。このコラムをお読みになっている方も、「○○運用」といった言葉をお聞きになったことがあると思います。
その代表格が、「資産運用」ではないでしょうか。投資をする人から資金を預かって株式や債券などを購入し、資金を増やしていくお仕事です。「資産運用」というと、銀行や証券会社などが連想されます。以前、自分の勤め先について「運用の会社」と説明したら、「証券会社さんですか?」と聞かれた経験があります。
もう一つ、代表的だと思われるのは「鉄道の運用」です。鉄道に詳しい方は、こちらを想像するのではないでしょうか。「鉄道の運用」は、鉄道の運行計画を達成するために、列車に対して車両や乗務員を割り当てるお仕事を指すことが一般的です。
このように「運用」は一般的に使われている言葉ですが、あらためて辞書で調べてみると、理解を深めるヒントが得られます。複数の辞書を見てみたところ、必ず記載されているキーワードがあります。それは、「用いる」「使う」「動かす」です。
銀行の普通預金口座にお金を預けると利子がもらえます。しかし利子だけではお金があまり増えないので、もっと多くお金を増やそうと考えます。そこで、より利回りが良い金融商品を求めて、銀行や証券会社の資産運用のサービスを利用することになります。サービスを提供する金融機関はお金を預かり、お客様に代わってお金を用いて、資産を増やします。
「鉄道の運用」は、列車を動かして人や物を運ぶことです。毎日私たちが通勤・通学できるのも、鉄道会社が「運用」をしているからと言えるでしょう。
ここでポイントがあります。これまでご説明したように「運用」は、お金を用いたり鉄道を動かしたりすることですが、めったやたらに「用いる」「動かす」わけではありません。用いてどうするのか? 動かしてどうするのか? つまり、何かしらの目的があって始めて「運用」が成り立つのです。
それでは、証券会社の目的は何でしょうか? 資産を増やしてお客様に喜んでもらい、最終的には自社の利益を増やしながら、社会に貢献すること。つまり、お客様と証券会社がお互いに"ハッピー:ハッピー"の関係になることを目的としています。
また、鉄道会社の目的は何でしょうか? シンプルに考えれば、時間通りに列車を動かし、定刻に目的地に到着させることです。これにより、お客様はハッピーになり、鉄道会社は社会的責任を全うできると考えられます。
「運用」には、もう一つキーワードがあります。それは、そのものの機能・特性を「生かす」ことです。つまり、「うまく用いる・使う・動かす」ということです。単に「用いる」「使う」だけでは効果を出すのが困難なため、そのものの機能・特性をうまく生かす必要があるのです。
実際、「運用」をするには、ふさわしい技術、ノウハウ、経験が必要になります。
「資産運用」にしても、私のような素人が知識を持たずに株式のデイトレードをやっても、儲からないどころか逆に手持ちの資産を目減りさせ、最悪、資産ゼロになってしまうかもしれません。そうならないためには、資産である現金・債権・株式などの特性を理解し、更に金融市場の動向を踏まえて、資産を生かした運用が必要なのです。
「鉄道の運用」も同様です。たくさん人や物を運ぶためには、どんどん列車を動かせばいいのですが、動かせる車両は限られています。また、列車に乗る乗務員も無限に存在しているわけではありません。そこで、鉄道会社はダイヤを作成します。ダイヤには「車両運用ダイヤ」と「乗務員運用ダイヤ」の2つがあり、これらを使って日々の列車をうまく動かしているのです。身近な例として、定期列車と臨時列車をうまく組み合わせて、帰省ラッシュに対応することがあげられますが、これも高度な技術があってこそ実現可能なのです。
このように「運用」という言葉は、「そのものの機能や特性をうまいこと用いて(使って・動かして)、目的を達成する」までの一連の活動を指していると考えられます。
<著者>
紫藤 泰至
<経歴>
メインフレームからのシステム運用の経験を活かし、お客様のシステム運用をデザインする業務を歴任。現在は、仮想化基盤(プライベートクラウド)運用、運用自動化をデザインするコンサルティングに従事。ITIL Expert保有。
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