イーコマース事業者に決済代行などのペイメントサービスを提供する(株)イーコンテクスト。同社グループで取り扱う年間の決済取扱高は1.5兆円、取扱件数は2.3億件を超え、物販や旅行、デジタルコンテンツにオンラインゲームなど、幅広い事業者に導入されています。
同社のサービスが広く支持される理由は、きめ細かなサポート体制に加えて、顧客ニーズに対応した新たなサービスをスピーディーに提供する開発力にあります。しかし利用する事業者の増加に伴い、運用保守に負担がかかるようになり、一部のスタッフはメンテナンスやサポート対応に追われ、本業であるサービスのシステム開発に注力できない状況にありました。
この課題を解決するために、CTCシステムマネジメント(株)(以下、CTCS)の運用アウトソーシングを選択し、わずか5ヶ月間で運用体制の見直しを実現しました。
・事業規模の拡大に伴うシステム運用・維持保守の負担
・運用アウトソーシング時におけるPCI DSSに準拠した環境の準備
・社内運用コストの増大
・運用アウトソーシングによる社内業務負担の解消
・リモートサイトをPCI DSS完全準拠
・CTCSリモート運用の活用による運用コストの改善
(株)イーコンテクストは、顧客である事業者・消費者が求める決済を提供するために、サービスの内容を充実させると同時に、関連するアプリケーションの開発も積極的に推進してきました。
結果として、同社のサービスを採用する企業の増加に伴い、運用保守に関する課題を抱えていました。同社システム部の奥田康司副部長は、この課題について次のように振り返ります。
「当社のペイメントサービスは、24時間365日の稼動が必須で、システムを止めることはできません。お客様のビジネスを支え、期待に応えていくためには、安定した運用保守が重要な業務となっていました。しかし、ハードウェアやシステムには、予期しないエラーや障害が発生します。以前は、そのような障害への対応は担当者のスキルに依存してしまうなど、システムごとの運用属人化が深刻な状況でした。また、障害に対してどのように対処していくのか、といったプロセスにも問題があり、社内のリソースだけで対応することには限界を感じていました」
同社にとって、ビジネスの中核であるペイメントサービスを安定して提供するためには、運用保守は必要不可欠です。
しかし、本来システム開発に注力すべき技術者が、日々の運用業務に追われることになり、運用コストが増大。さらには運用業務の属人化が進んでいたことから、業務の負荷分散が難しく、結果的にリソース不足になるという負のスパイラルが発生しつつある状況でした。
そこで、奥田氏は運用保守を外部の専門企業にアウトソーシングする計画をスタートしました。
運用アウトソーシングを依頼する会社を選定するために、奥田氏はインターネットで複数社検索しました。その中の1社に、CTCSもリストアップされていました。
「CTCSのホームページから問い合わせフォームで質問を送りました。すると、すぐにその日に営業の方からメールで連絡があり、2~3日後には社に来ていただきました。当社の経緯や悩みなどを聞いてもらい、課題解決への対応は非常に速かったと記憶しています」と奥田氏はCTCSへ問い合わせた当時を振り返ります。
CTCSの他にも、複数社の企業を比較検討していましたが、最終的にCTCSを選んだ理由について、奥田氏は以下のように話します。
「システムの運用保守に30年以上の歴史があるという点も評価しました。さらに、決め手となったのは当社が開発したアプリケーションの保守も担当してもらえることでした」
同社のアプリケーションは、契約している事業者に円滑なサービスを提供するために、高度な設計を基に作りこまれています。そのため、運用アウトソーシングを相談した会社の中には、対応が困難だと回答してくる例もありました。
それに対して、CTCSは長年に渡り培ってきた運用アウトソーシングの実績と経験から、複雑に作りこまれたアプリケーションでも、安全に確実に保守できると提案したのです。
こうした姿勢を評価して、同社システム部ではCTCSの運用アウトソーシングを選定しました。
(株)イーコンテクストの膨大なシステム運用業務に対し、CTCSが提案したのは、オンサイト運用とリモート運用を組み合わせたマルチサイト運用でした。
CTCSは、属人化された運用部分を精査し標準化に着手しました。標準化した運用業務を、CTCSが提供するシェアード型のリモート運用・監視サービスへアウトソースし、標準化が困難な業務のみオンサイトに残すことで運用負荷の低減を実現しました。
「CTCSには、標準化された運用保守サービスの提供を期待していました。オンサイトとリモートを組み合わせた24時間365日の運用保守がスタートして、社内のエンジニアが本来の開発業務に注力できるようになりました」と奥田氏は成果について語ります。
また導入に際し、リモート運用部分において国際基準PCI DSSに準拠することが求められました。PCI DSSとは、Payment Card Industry Data Security Standardの略称で、クレジット業界におけるグローバルなセキュリティ基準です。
評価の項目総数は約400件におよび、その中には「安全なネットワークの構築と維持」をはじめとして、「カード会員データの保護」や「定期的なネットワークの監視およびテスト」など、ネットワークや運用保守に関する厳格な審査基準があります。CTCSはこの基準に対応するため、専用の運用ルームなど必要な設備をリモートサイト側に調達することでクリアしました。
またそれらの費用を月額料金とすることでコスト的にも利用しやすいものとなりました。
「リモートサイトの導入において、PCI DSSへの適合は必須要件でした。専用の運用ルーム設置などリモートサイト側にも柔軟に対応していただきました」と奥田氏は評します。
「リモート運用・監視サービス」では、お客様の要望に応じたカスタマイズによる運用・監視サービスを提供します。
(株)イーコンテクストにとって、初となる運用アウトソーシングがスタートして数ヶ月が経過し、CTCSによる安定した運用保守が遂行されています。
「当社では、これまでシステム開発から運用保守までを内製しており、運用保守を外部に委託すること自体、初の試みとなります。
過去に、多くの会社で培われてきた運用保守の経験があるCTCSには、システムの一部の保守だけでなく、ビジネスパートナーとして、共にシステム部門のさらなる改善にご協力いただけることを期待しています」と奥田氏は述べます。
加えて「今後は、システム運用保守業務だけではなく、インフラ導入や新規開発業務への提案、参画など、多岐に渡り当社を支援いただけることを期待しています。また、品質は高く保ちつつ、コストを改善していく提案などにも、一緒に取り組んでいけたらと考えています」と、今後の展望についても明るく語ります。
株式会社イーコンテクスト
所在地:渋谷区恵比寿南3-5-7
デジタルゲートビル
設立 :2012年10月1日
URL :http://www.econtext.jp/
※本記事は2016年10月に取材した内容を基に構成しています。
記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。